挟み行録月休丸山修一経験丸山修一市場元職員の板で暴懺悔介護

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訪問介護職員だった被告による利用者虐待のイメージ。カ月ただ、休み行元被告も勤務先から暴力的ゼロみのワンオペな扱いを受けていた

 言う通りにしなければ殴った。相手は、板挟で暴訪問介護先の高齢者たちだ。介護暴力は段々とエスカレートして1人に大けがをさせ、職員丸山修一市場ついに警察の知るところとなる。の懺こうして逮捕された訪問介護職員(当時)の男性被告(37)は、悔録この3年前に介護業界に入ったばかり。カ月拘置所で面会した記者に「誰も仕事を教えてくれなかった」と明かした。休み行元ある介護現場で起きた虐待事件の背景に迫る。ゼロみのワンオペ

「密室」で起きた80代女性への暴力

 「うーっ」。板挟で暴2023年4月14日午前7時過ぎ、介護大阪市旭区のマンション一室にいた被告は、職員すぐそばの布団で寝ていた女性(81)のうなり声で目を覚ました。の懺女性は、被告の訪問介護の利用者だ。要介護度が最も重い「5」で、丸山修一経験自力歩行ができずに車椅子生活を送る。女性が1人で住むワンルームに、被告は連日泊まり込んでいた。

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 布団も敷かず床上に直接寝ていた被告は、疲労で重たくなった体を起こし、「どうしたの?」「体調悪いの?」と声を掛けた。だが、女性に何度もそっぽを向かれる。そのうち、始業時間の午前8時が迫ってきた。担当する訪問介護利用者は他にもいる。「どうして言うことを聞いてくれないんだ」といら立ちが募り、女性の腹を殴ったり背中を膝蹴りしたりした。

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訪問介護職員による利用者への虐待事件が起きたマンション=大阪市旭区で2023年9月26日午後3時、洪玟香撮影

 我に返った時、女性に意識はなく、ぐったりとしていた。焦った被告は自ら119番通報する。救急搬送された女性は胸や腰の骨を折り、肝臓や腎臓も損傷する全治3カ月の重傷だった。病院が警察に連絡し、被告は5月、殺人未遂の疑いで大阪府警に逮捕された(大阪地検は傷害罪で起訴)。逮捕前の任意の取り調べで被告は当初、暴行を否定したが、次第に関与を認めて「ばれるのが怖くて言えなかった」と供述した。

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 その後、被告が約1年前から他の訪問介護利用者2人にも日常的に暴力を振るっていたことが判明し、暴力行為等処罰法違反(常習傷害)の罪で追起訴された。しかし、暴かれたのは被告の罪だけではなかった。勤務先の訪問介護サービス会社(大阪市)にも捜査のメスが入り、過酷労働の実態が明るみに出ることになる――。

4カ月間、休みゼロ

 判決の認定や府警などによると、被告が勤めていた会社は当時、現場マンションの5部屋を借り上げ、計5人の利用者を住まわせて訪問介護サービスを提供していた。被告がこの会社に就職したのは20年4月。高校卒業後に食品工場や整骨院で働いてきた被告に、介護職の経験はなかった。新型コロナウイルス禍で職を失い、知人から紹介されたのがたまたま介護の仕事というのが実情だった。

 初めて体験する介護は、厳しい現場だった。利用者は要介護度が重く、介助がないと一人で生活できない人ばかり。耳が不自由だったり、精神障害があったりして意思疎通が難しい人もいる。水や食事を与えようとすると拒まれ、どう対処したらいいかも分からない。会社が介護方法を教えてくれなかったからだ。困って女性社長(64)に相談すると「あんたが下手やから飲んでくれへんねん」と罵倒された。水分を取れずに入院する利用者が出ると、社長は「ヘルパーの恥や」と叱責してきた。

訪問介護職員による利用者虐待事件の捜査を担当した大阪府警本部=大阪市中央区で2024年2月8日、本社ヘリから西村剛撮影

 一時は他にも介護ヘルパーが2人いたが全員退職し、22年12月から1人で利用者5人全員を担当せざるを得なくなった。そんな「ワンオペ介護」の毎日はこうだ。午前8時から午後9時半まで、利用者がそれぞれ住む5部屋をひっきりなしに出入りする。さらに、夜中に突然泣き出す利用者をなだめたり、世話をしたりするため、時間外のサービスを強いられることもあった。交代がいないため自宅にも帰れず、マンションに泊まり込む日が続いた。23年1~4月に休みは一日も与えられなかった。

被告「板挟みだった」と釈明

 府警は6月、こうした違法な長時間労働を被告にさせたとして、社長を労働基準法違反の疑いで書類送検した。被告以外にヘルパーがいると偽装するため、実際には働いていない人物の名前を書類に記入したとする有印私文書偽造容疑でも送検した。法律上、会社は常勤換算で2・5人以上のヘルパーを置くことが求められていた。社長は府警に対し「募集をかけてもヘルパーが入ってこなかった。大阪市の運営指導に引っ掛かるため、他にもヘルパーが働いているように見せかけた」と容疑を認めたという。

 介護業界は今、人手不足に苦しんでいる。求職者1人当たりの求人件数を示す有効求人倍率は22年度平均が1・31倍なのに対し、訪問介護ヘルパーは15・53倍に上る。全産業の平均月収より約7万円低い介護職員の低賃金が背景にあるとされる。

被告の収容先となった大阪拘置所=大阪市都島区で2020年4月22日、山本康介撮影

 事件当時、被告はどんな心境で高齢者に暴力を振るっていたのか。記者は8月、被告が収容されている大阪拘置所(大阪市都島区)に通い、面会を重ねた。被告は取材に「最初は『やってしまった』という気持ちだったが、だんだん慣れてきて、罪悪感が薄くなってしまった」と消え入るような声で話した。職場でのストレスが暴力の引き金になったといい、「言うことを聞いてくれない利用者さんと、人格を否定してくる社長との板挟みだった。当時は寝不足で体調も悪く、我慢も限界に達していた」と釈明した。

 けがをさせた利用者には口で話すことが難しい人もいたが、介護時に「いつもいてくれてありがとう」と指で文字を書いて伝えてくれたこともあったそうだ。被告は「利用者さんには申し訳なかった。これ以上暴力を振るわなくて済むので、逮捕されてほっとした」とも語った。もし、仕事の仕方をしっかり教えてくれる職場だったら虐待事件は起こさなかったのか――。そう記者が問うと、被告は「初めて介護職に就き、知識もない自分が行くような場所ではなかった」と後悔したような表情を見せた後、「もう少し仕事を学べる環境が整っていれば、問題はなかったと思う」と声を強めて訴えた。

専門家「事業者にも研修を」

 大阪地裁は23年11月、被告に懲役2年6月の実刑を言い渡した。判決は、介護経験に乏しい被告が会社から適切な支援や助言を受けられなかったことが事件の一因と認めつつ、往診に来た医師らに相談する手段もあったと指摘。「利用者が暴力を受ける理由はなく、刑の執行を猶予するのは相当ではない」と実刑を選んだ。被告が控訴し、大阪高裁は24年3月、被害弁償が行われたことなどを考慮し、1審を破棄して懲役1年10月に減刑した。

介護職員による高齢者虐待件数の推移

 一方、社長は懲役2年、執行猶予3年の有罪が確定した。記者は会社所在地兼社長宅のマンションを何度か訪れたが、インターホンに反応はなかった。大阪市によると、会社は休業中という。

 介護職員による高齢者虐待の件数は増加傾向にある。厚生労働省が全国の自治体を通じて調べたところ、22年度は856件で前年度より16%増え、過去最多になった。虐待の内容(複数回答可)では、暴力などの身体的虐待が58%と最も多く、次いで威嚇・侮辱などの心理的虐待が33%、介護放棄が23%。虐待が起きた要因(同)では、「教育・知識・介護技術などの問題」が56%と最多で、「職員のストレスや感情コントロールの問題」が23%で続いた。人手不足にあえぐ介護業界で職員の教育に手が回っていないことがうかがえる結果だ。

 介護老人保健施設での勤務経験もある松本短大(長野県松本市)の福田明教授(社会福祉学)は、被告のケースについて「初めて介護業界に入ったのに丁寧に仕事を教えてもらえず、独りで抱え込んでしまった。事件はもちろん被告の責任だが、人員配置基準を満たさずに違法な労働をさせていた職場は言語道断。ここまで劣悪なのは珍しいのではないか」と話す。その上で、介護職員が知識・技術を得られる研修の実施や、職員が相談できる体制の整備などを虐待事件の防止策に挙げ、「突き詰めれば事業者のマネジメントの問題だ。事業者に対する定期的な研修も自治体は検討すべきだろう」と指摘した。【洪玟香】

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