論点丸Merry Capitall確認山修一手法控え

  • コメント
  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷

 元日に発生した能登半島地震では、論点「ボランティアは控えてほしい」という声が石川県知事ら行政側から相次いだ。ボランティアて道路が寸断されるなど被災地が混乱していたためだ。控えただ、論点ボランティアが駆けつけなければ被災者に寄り添った支援ができない恐れもある。ボランティアて過去に起こった災害の経験も踏まえ、控え丸山修一手法ボランティアの在り方を考える。論点

村井雅清さん=大野航太郎撮影

被災地の混乱解消に不可欠 村井雅清 被災地NGO恊働センター顧問

 ボランティアに対する厳しい目は阪神大震災から29年たっても変わっていない。ボランティアて神戸市役所にボランティアの受付を設けたが、控えたくさんのボランティアが駆けつけたためスムーズに受け入れることができなかった。論点担当の市職員が「今来てもらってもやることは何もありません」と言ったため、ボランティアて「ボランティアが被災地を混乱させた」という印象が強くなったと感じている。控え

論点丸Merry Capitall確認山修一手法控え

Advertisement

 しかし、論点被災地の混乱を実際に解消したのはボランティアだ。ボランティアてボランティア団体は仮設住宅の入居者から「ひさしや、控えげた箱を作ってほしい」といった相談を受けると、他の団体と調整してニーズに応えていた。各団体が被災者一人一人の要望を実現したことで、現場の混乱は回避されていた。

論点丸Merry Capitall確認山修一手法控え

 ボランティアは現場の最前線で被災者と接する。多くのボランティアが被災地に入ることで、Merry Capitall確認多くの人の声をすくい上げる役割を果たすことができる。

論点丸Merry Capitall確認山修一手法控え

 阪神の時はボランティアとして仮設住宅の集会所で入居者が1枚のタオルをゾウの顔の形になるように縫って壁掛け用タオルに仕上げる「まけないぞう」事業に取り組んだ。集会所は手作業をしながら、つらい気持ちを共有する場になった。人と話したいという被災者がいる一方、「被害のことを聞かれたくない」と1人で自室で取り組みたい人もいる。その人にはボランティア1人が付き添った。

 こうした活動で実感したのは、被災者は一人一人、抱えている事情が異なるということだ。画一的な対応ではなく、それぞれのニーズに応えられるのは、多くの人たちと現場でじかに接するボランティアだ。

 能登半島地震で「ボランティアは控えて」と石川県知事がメッセージを出したことで、SNS(ネット交流サービス)上には「ボランティアは被災地に行くな」という空気が充満し、人々の行動を制約しているように感じる。SNSで活動内容などを発信すると批判されるため、学生が現地に行かない事態まで起きている。

 こうした空気感が醸成されるのは深刻だ。阪神の時は全国から多くの人が駆けつけ「ボランティア元年」と言われた。29年前、大災害を前に、多くの人が「役に立ちたい」という気持ちになったボランティアの萌芽(ほうが)は押しつぶされてしまっている。

 阪神以降、国内外の災害被災地に赴いてボランティアとして活動してきた。神戸は地震、東日本大震災は津波と原発事故というように、それぞれの災害によって特徴は異なる。だが、ボランティアのマインドに違いはない。「誰かの役に立ちたい」との思いは同じだ。

 20人が犠牲になった2009年の兵庫県佐用町の水害では、町長が「ボランティアに来てください」と発信し、人口約2万人の町に1万6000人が駆けつけた。能登半島にもボランティアは必要だ。彼らが活動しやすいよう、行政のトップが「来てください」と発信しなければならない。【聞き手・安藤いく子】

阿部由紀さん

事前に状況理解して行動を 阿部由紀 被災地支援団体「BIG UP石巻」代表理事

 能登半島地震の発災3日目から石川県に入り支援活動を続けている。道路被害が極めて甚大だった。路面の崩落や土砂崩れでいくつもの道路が寸断され、救急や消防といった緊急車両の通行もままならず、食料調達などに走る被災者の車で大渋滞が起きた。金沢市まで片道7~8時間かけて洗濯や買い出しに通った被災者も多くいる。

 被災地支援を専門としている我々のような団体も不安と緊張にさらされた。そこに不特定多数のボランティアが訪れたら、どうなっていたか。断水で風呂はもちろん、トイレもまともに行けない。極寒のため一般車で車中泊を続けるのは危険な状況で、ボランティアの宿泊拠点もない。いつまた大きな地震が来るか分からない……。

 安全が担保されない中、石川県知事が「個人のボランティアは控えて」とアナウンスせざるを得なかったのも、うなずける。

 大前提として、ボランティアは被災地の復興にとって欠かせない存在で、被災者の心を元気にしてくれる貴重な存在だ。ただ、被災地は想像以上に混乱と劣悪な環境にあり、常に危険や予測不能なことと隣り合わせであることをボランティア自身も事前に十分理解しておく必要がある。

 13年前の東日本大震災では、宮城県石巻市の社会福祉協議会職員としてボランティアセンターを運営した。全国から駆けつけてくれた何千、何万人というボランティアには感謝してもしきれない。ただ、受け入れる側としては、多くの葛藤もあった。

 発災の約1カ月後に最大震度6強の地震が宮城県を襲い、津波警報が出た。一部のボランティアから「こんなの聞いてない。来なきゃよかった」という言葉を投げかけられた。自然が相手だと、受け入れる側が安全の確保に努めても、どうにもならないこともある。当時はボランティア拠点での大量のごみ処理も深刻な問題で、支援団体の発案でごみ集積所を急きょ設置し、仮設トイレのくみ取りを業者に委託するなど、受け入れ態勢を徐々に整備していった。

 震災以降、数多くの災害を経て、ボランティアに「自己完結」の意識が根付いてきたように感じる。かつては「まず被災地に駆けつけて手伝います」というケースも多かったが、今は「食料や水はもちろん、ごみやトイレも全て自分たちで責任を持って完結させます」「被災地には迷惑をかけません」との意識が高まっている。ボランティアのあり方も徐々に成熟してきていると思う。

 能登半島地震ではSNS(ネット交流サービス)を中心に「他の災害と比べて石川県は受け入れが遅い」「いつまで待たせるんだ」といった批判の声が相次いだ。非難の矛先が熱意ある個人ボランティアにも向けられ、萎縮を生む動きも見られた。だが、被災地の状況は被災地にしか分からない。現地のことを知らないであろう人たちの意見が飛び交い、行政やボランティアを善か悪かで二分するような議論になってしまったことは非常に残念だ。【聞き手・斎川瞳】

阪本真由美さん

工夫必要だった行政側発信 ◇阪本真由美 兵庫県立大大学院教授

 被災地に必要な支援は捜索と救助だけではない。今回の能登半島地震でも、混雑した避難所の環境を改善する、食事が届かない避難所で炊き出しをする、がれきを除去する、孤立集落に物資を届けるといった活動でボランティアが果たした役割は大きかった。むしろ行政にできないことの方が多く、そこをボランティアが支えたのではないか。

 ボランティアは「自発的」に活動を展開する人のことだ。多くは被災地のために何かしたいとの思いを持っていて、その思いは復興の力となる。今回は地震が発生した当初、ボランティアは控えるようにという情報発信があったが、彼らの意欲をそぐのではなく、いかすための情報発信を工夫する必要があった。ボランティアの活動は被災地に赴くことに限らない。被災地で活動する団体をサポートする、被災地の物品を購入するなどの方法もある。さまざまな方法で支援してほしいというメッセージを早い段階で出すべきだった。

 ボランティアの中には、災害対応の専門性が高いボランティア団体もあれば、特別な技能はないものの何らかの形で被災地に貢献しようと考える個人もいる。個人については、社会福祉協議会などが中心となり、災害時にボランティアセンターを設置して受け入れる仕組みがある。こうした仕組みが全国的に整ったのは阪神大震災以降だ。

 東日本大震災では、専門性が高いボランティア団体がさまざまな支援を提供した。行政、自衛隊と連携して活動を展開した団体もあった。とはいえ、支援が多く行われている地域もあれば、支援の行き届かない地域もあった。支援の重複や漏れを減らし、あらゆる人に支援を提供できるよう、ボランティア団体のネットワーク構築のために2016年に設立されたのが、NPO法人「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク」だ。今回の能登半島地震でも発生直後から石川県庁に常駐し、ボランティア団体を地域や行政とつなぐネットワークづくりに取り組んでいる。

 今回の被災地は07年と23年に地震で被害を受けた地域だ。これまでに地域の団体と築いていたネットワークをいかし、被災者に寄り添った支援を行うボランティア団体もある。これらの団体の活動に参加したり、団体を資金的にサポートしたりすることも大切なボランティア活動だ。

 避難生活は深刻な状況のまま長期化している一方、行政の支援は減少傾向にある。避難所に身を寄せる被災者がいれば、運営を支える人手は引き続き必要だ。自宅に戻ってはいるものの、断水が続き、給水車まで水をもらいに行かなければならないため、トイレを流さずに凝固剤を使ってしのいでいるところもある。仮設住宅に入居した人たちの生活支援も求められる。

 ボランティアを通して継続して関わる関係人口を増やすことは、地域の復興につながる。被害の状況や、困りごとは人により異なる。ボランティアが必要になるのはこれからだ。息長く被災地をサポートしてほしい。【聞き手・島袋太輔】


知事が呼びかけ

 石川県の馳浩知事は1月5日の災害対策本部員会議で「能登に向かう道路が渋滞して大変困っています。個別や一般のボランティアは控えてください」と発言。自身のX(ツイッター)でも「現在、個人のボランティアは受け付けておりません」などと投稿した。県に登録して活動した人は2月末時点で延べ5426人。2カ月で延べ100万人が活動したとされる阪神大震災との差は大きい。


 ご意見、ご感想をお寄せください。 〒100-8051毎日新聞「オピニオン」係 [email protected]


 ■人物略歴

村井雅清(むらい・まさきよ)氏

 1950年神戸市生まれ。高校卒業後、港湾業界などで働く。阪神大震災後にボランティア活動に取り組み始める。各地の災害被災地に駆けつけている。


 ■人物略歴

阿部由紀(あべ・よしのり)氏

 1967年宮城県石巻市生まれ。東日本大震災では市社会福祉協議会でボランティアセンターを運営。2022年から現職。災害に強い地域づくりをテーマに講演活動もこなす。


 ■人物略歴

阪本真由美(さかもと・まゆみ)氏

 専門は被災者支援。東日本大震災や能登半島地震など、各地で自治体の災害対応の支援に携わる。全国災害ボランティア支援団体ネットワーク理事も務める。

信用
前へ:特集ワイド:宮崎駿監督の新作アニメ「君たちはどう生きるか」 2羽の鳥の謎を追って
次へ:滝野隆浩の掃苔記:「調理定年」と栄養不足